今では当たり前のように、新しい曲の稽古は暗譜・暗唱から始めるようになり、そのコツもわかるようになった。
しかし、三線を始めた頃はそうではない。工工四を見ながら弾くことが当たり前で、「弾けた」というだけで満足していた。
転機になったのは、人前で演奏する機会が増えてきたことだった。
「お客さんの立場で考えたら、ずっと楽譜を見ながら演奏する姿を見ても、あまり楽しくないだろう。」
そんなことを思い、思い切って暗譜・暗唱に挑戦してみた。
最初は大変だった。
歌詞は覚えられないし、三線の流れも途中で止まる。何度も工工四を開き直しては、また閉じる。その繰り返しだった。
それでも少しずつ身体に入ってくると、不思議なことが起こり始めた。
工工四を見ることに使っていた意識を、歌や節回し、強弱、そして「どう表現するか」に向けられるようになったのである。
さらに、顔を上げて聴いてくださる方を見る余裕も生まれた。
暗譜・暗唱は、単に楽譜を見なくても弾けるようになる技術ではない。
音楽を楽しむための自由を手に入れることなのだと思う。
もちろん、初心者のうちは工工四を見ることを恥ずかしいと思う必要はまったくない。
まずは正しく弾くことが大切である。
ただ、もし「いつか人前で歌ってみたい」「もっと三線を楽しみたい」と思うなら、早い段階から少しずつ暗譜・暗唱に挑戦することをおすすめしたい。
全部を一度に覚える必要はない。
一節ずつでもいい。一番だけでもいい。
毎日少しずつ繰り返していると、ある日突然、「あれ、工工四を見なくても弾ける」という瞬間がやってくる。
その瞬間から、三線の楽しさは一段階広がる。
私自身、まだまだ修行中の身ではあるが、この楽しさだけは胸を張って伝えられる。
新しい曲に取り組んでいる仲間に伝えたい。暗譜・暗唱に挑戦してみよう。
きっと、今までとは違う景色が見えてくるはずだ。

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