えびすの三線ライフ

三線を弾き、唄い、学び、暮らす。還暦を迎えてなお新しい景色を求めながら、八重山民謡の稽古と日々の暮らしを重ねています。小さな積み重ねの中にある喜びや気づきを、ゆっくり綴っていきます。

三線サークルの仲間で、ちょっと変わった工工四を作っている人たちがいた。

普通の工工四とは違い、勘所の横に「1番」「2番」と、それぞれ歌う歌詞を書き込み、それを横に長くつなげたものだ。

私は、その見た目から「巻物」と呼んでいた。

そして私は、この巻物を少し邪道扱いしていた。

「こんなものを作るのに時間をかけるくらいなら、その時間で暗譜・暗唱したほうがええやん」

そう思っていた。

この巻物をせっせと作っているひとりに、小学校からの同級生で、今は三線を習ってくれているマメな男がいる。

新しい課題曲を決めるたびに、自分用の巻物を作る。

せっかくなのでサークルのメンバーにも共有してみると、これが予想外の大好評。

「これ、使いやすい!」

「こういうのを欲しかったんです」

次の作品まで期待されるようになってしまった。

こうなると、いつまでも「巻物」と呼んでいるのも味気ない。

そこで正式名称をつけることにした。

「スクロール工工四」©️

さらに製作者にもブランド名をつけた。

「まさひろ手造(しゅぞう)」

もちろん、沖縄の泡盛メーカー「まさひろ酒造」のもじりである。

本人がどう思っているかはともかく、私たちのサークルでは、徐々にブランド化している。

そんなスクロール工工四を少しバカにしていた私だが、最近、その評価を大きく変えつつある。

八重山民謡を本格的に習うようになって、新しい課題曲がどんどん増えてきたからだ。

一曲を暗譜・暗唱してから次の曲へ――。

理想としては、それがいい。

しかし実際には、覚えるスピードより、新しい曲がやってくるスピードのほうが速い。

暗譜も追いつかない。

歌詞の暗唱も追いつかない。

それでも稽古では、新しい曲をきっちり歌わなければならない。

幸い、私の師匠は暗譜・暗唱を推奨しながらも、それを絶対条件にはしていない。

まずは工工四を見ながらでも、節回し、音程、三線の手を正確に覚え、きっちり歌えるようになることを優先する。

覚えるのは、その先でもいい。

このやり方で稽古を続けていると、あれほど邪道扱いしていたスクロール工工四が、実によくできた道具であることが分かってきた。

通常の工工四と歌詞を別々に追う必要がない。

「ここは何番の、どの歌詞だったか」と頭の中で行ったり来たりする負担も減る。

工工四を追いながら、その場所で歌う言葉がそのまま目に入ってくる。

特に、まだ曲全体が頭の中に入っていない初期段階では、かなり便利なのだ。

そして最近では、新しい課題曲に入ると、まず画像加工ソフトを開く。

そして、自分でスクロール工工四を作る。

完全に宗旨替えである。

「そんなものを作っている暇があったら暗譜せえ」

そう言っていた人間が、今ではせっせと作っている。

ただ、実際に使ってみて分かった。

スクロール工工四は、暗譜しなくていいための道具ではない。

暗譜できるところまで、曲を何度も正確に通るための道具なのだ。

工工四を見ながら弾く。

歌詞を追いながら歌う。

何度も繰り返す。

そのうち、視線を落とさなくても弾けるところが増えてくる。

歌詞も自然に口から出るようになる。

そして最後には、スクロール工工四そのものが要らなくなる。

そう考えると、これは案外、暗譜・暗唱への近道なのかもしれない。

自分が「邪道」と思っているものも、使い方次第では立派な稽古道具になる。

三線を長くやっていても、こうして考えを改めることがある。

というわけで、「まさひろ手造」のスクロール工工四。

今では私も、ありがたく使わせてもらっている。

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