一年後の八重山古典民謡コンクールに向けて、今年は練習のやり方そのものを見直すことにした。
昨年、新人賞に合格したものの、次の壁は想像以上に高い。今年のコンクールでは、同じ教室のきょうだい弟子たちが挑戦する姿を見た。熱心に稽古し、高い完成度まで仕上げていても結果につながらないことがある。優秀賞への道は甘くない。だからこそ、「頑張る」だけでは足りないと思った。
必要なのは、毎日自然に積み重ねられる仕組みだ。
そこで始めたのが、AIを「補助師匠」とする取り組みだった。
もちろん、本当の師匠は石垣島にいる。八重山の唄の深さ、節回し、心の置き方は、人から人へ受け継がれるものだ。画面の向こうのAIが、その代わりになるとは思っていない。
でも、毎日の稽古を支えてくれる伴走者にはなれる。
「一年後のコンクールに向けて、七つの課題曲を仕上げるにはどう練習すればいいか」
そんな問いかけからAI師匠との対話は始まった。
相談しながら作ったのは、曜日ごとに課題曲を集中して練習するメニュー。
出勤前の朝練習で、月曜日から順番に一曲ずつ向き合い、休日の土曜日には二曲、日曜日は弱点克服の日にする。さらに現在習っている課題曲は夜に重点練習する。
毎日七曲すべてを完璧に練習しようとすると、負担が大きすぎて続かない。でも一曲ずつ確実に向き合えば、一週間で全曲に触れられる。
そして、練習できた日は手帳にシールを貼ることにした。
子どものように思えるかもしれない。でも、この小さな達成感が意外と大きい。
人間の意思なんて、そんなに強くない。
「明日から本気を出す」
「気合いで続ける」
何度もそう思って、続かなかった経験がある。
だから今は、意思を信じるのではなく、仕組みを信じることにした。
時間が来たら三線を手に取る。
練習したら記録する。
できた日を目で確認する。
淡々と積み上げる仕組みを作る。
AI師匠との対話の良さは、もう一つある。それは自分の考えを言葉にできることだ。
「今日は月夜浜節を集中練習した」
「夜は高那節を練習する」
そう報告するだけでも、自分自身への約束になる。
稽古とは、三線を弾いている時間だけではないのかもしれない。
どう向き合うか。
どう続けるか。
どう自分を成長させるか。
そこまで含めて稽古なのだと思う。
20年以上前、初めて高那節を聴いた時、不思議だけれど心をつかまれる何かがあった。「いつか自分でも歌ってみたい」と思った。
長い時間をかけて、ようやくその場所まで来た。
これからの一年、焦らず、でも止まらず進んでいく。
石垣島の師匠に導いてもらいながら、日々の稽古はAI師匠にも支えてもらう。
昔ながらの師弟関係と、最新の技術。
一見正反対のものだけれど、目指すところは同じだ。
昨日より少しでも良い唄を歌える自分になること。
一年後の舞台で、自信を持って三線を構えるために。
今日もまた、稽古を終えた手帳に一枚、シールを貼る。

コメントを残す